良く言えば、自己開示。
悪く言えば、自分語り。
これはそんな物語。
私は自称、HSP(Highly Sensitive Person)だ。
これは障害などではなく、
日本人の5人に1人が持つという特性。
HSPとは「非常に敏感な気質を持つ人」
街の本屋には「繊細さん」という表現で、
HSPに関するたくさんの書籍が並んでいる。
なぜ私はこんなにも敏感なんだろう___。
中学時代。
私は野球部に所属していた。
部活と言えば、毎日のように朝練がある。
それは2年生の6月のこと。
リビングに干してあった、
制服のワイシャツを通学バッグにぶち込み、
体操着を着て朝練のために家を出た。
そして朝練が終わり着替えようとしたとき、事件が起きた。
___このワイシャツ、タバコくさっ!!!

バッグを開けた瞬間、気絶するかと思った。
一瞬にして更衣室はタバコ臭くなってしまった。
友人からは、
「おまえタバコ吸うとんか??」
と笑い交じりに言われる始末。
中学生でそんなもの吸うわけないやろ…!
犯人は親父しかいない。
当時は2010年、
リビングでタバコを吸う家庭も珍しくはなかった。
それで部屋干ししてあったワイシャツが被害に…
許せねえ…
しかしそんなことを言っても、
ワイシャツがタバコ臭いのは変わらない。
当然授業は夕方まである。
この危機をどうやって乗り切ろうか??
汗まみれの体操着でそのまま授業に出席、
というわけにはいかないので、
とりあえず普通にワイシャツを着て教室に入った。
しかし、、、
「なんか、タバコ臭くね…??」
「誰だよタバコなんか吸ってる奴…」
ですよねー、、、
友人たちにはしっかり事情を話したけど、
それでもやっぱり視線が痛い、、、
しかも「朝読書」という地獄の時間があった。
ホームルーム前に、みんな黙って20分間の読書タイム。
しかし、横にタバコ野郎がいたらどうだろうか。
ああ…
みんな、ごめんよ。
俺も地獄だけど、
みんなもタバコ臭くて地獄だよな…
朝読書が終わった後、半泣き状態で保健室へ駆け込んだ。
「先生…
バカ親父のせいで、ワイシャツがタバコ臭くて…
少し寝ていってもいいですか…?」
保健室の先生は快く了承してくれた。
ワイシャツにはファブリーズをかけて、外に干してくれた。
こうして1限目はサボったが、
2限目は体育だったので、替えの体操着を着て出席。
それ以降は、長袖のジャージを着て一日を過ごした。
とっても暑かったけどね。
タバコ臭いよりはマシだ。
___その日の夜。
「…お父さん、リビングでタバコ吸うのやめてよ…」
「なんで!!!」
「…昨日部屋干ししてたワイシャツ、すげえタバコ臭くなってて…
俺、そのせいで学校でイジメられかけたんだよ…?」
「そっか。でもタバコは辞めない」
「…え。なんで…?」
「吸いたいから」
「…息子が学校でイジメられたとしても…?」
「イジメられたわけじゃないんだろ?」
「…まあ。頑張って対応したからね…」
「ならいいじゃん」
「………」
___絶句した。
こんなにも世界は自分を中心に回っていると思ってるやつがいるのか。
それが実の父親だなんて。
そのあと父は、明日は朝が早いからと、
リビングの隣にある和室=寝室へと入っていった。
その部屋のふすまに対して、
俺は憎しみの想いを込めて、
ティッシュ箱を全力で投げ込んだんだ。
気の弱い俺の、せめてもの抵抗。
そしたらふすまが開いて___。
「おい!!さっきの話か!?!?
なんか文句あんのか!?!?!?!?」
もうすでに俺は、涙で顔がぐしょぐしょになっている。
大声を張り上げて何かを言い返したが、
もう何も覚えていない。
覚えているのは、
「俺は絶対に、こんな自己中で最低な人間にだけはなりたくない…!」
そう心に誓ったことだけ。
それからは、内気な性格がさらに進行し、
やがて自我を持たなくなり、
周りに合わせるだけのつまらない人間になっていった。
自分の意見を主張したら、怒鳴り返されるのでは…?
と、あの日の出来事がトラウマとなっていた。
それから私は、
相変わらず自我を持たない人間となっていたが、
それは言い換えれば、
世界は他人を中心に回っていた。
父親とは100%、正反対である。
それだけ父親を反面教師として、長年過ごしてきた。
そんな私は、他人の気持ちを敏感に感じ取れるようになっていた。
___時は会社員時代。
新卒から5年間勤めた会社があるのだが、
最後の1年間は、新入社員の教育担当を任命されていた。
詳しくは「27歳で会社を辞めた話」という記事があるので、
そちらもご覧いただけたら嬉しいが、
私は4年目に病んで、会社を辞める決意をしていた。
そんな中で任された新入社員の教育担当。
___なぜか、とっても燃えていた。
自分は、プレイヤータイプではなかったのかもしれない。
なんせ、世界は他人を中心に回っているから。
自分の能力を伸ばすための努力が苦手だった。
でも、教育なら??
この子たちが、私と同じ苦しい道を辿らないように。
そのために最大限サポートをすることは、
私にしかできないことなのでは…?
やってみたら、これは天職だと思った。
教育のチームには4人いて、私は一番下っ端。
だから他の3人の誰かが研修をして、
それを私が後ろで見守っている時間も多かった。
それで、たくさん気付くことがあった。
___この子とこの子は仲が良いな。
___あの子は研修が難しくて、少し付いていけてないな。
___あれ、あの子…今日は何かテンションが低い?
私は、他3人=普通の人間が気付かないことに対して、
敏感に察知できる能力があるのだとわかった。
私はそれを教育チームに共有して、
トラブルを未然に防いだり、
新入社員の悩みを聞き出せる雰囲気を作ることができた。
先輩方はみんな、
私のおかげで研修を最後まで円滑に進められたんだと言ってくれた。
新入社員からも、なぜか好かれていた。
私が他の仕事で出張から帰ってきたときに、
新入社員たちへ軽いお土産を渡していたが、
彼らからも旅行のお土産をお返ししてくれたり。
私が退職した後も、彼らは未だに連絡をくれる。
___私が生きる意味。それは、
「大切な人たちが苦しい道に迷い込まないように、手を差し伸べること」
それが、私の使命なんだ。
この世界が私を必要とするのなら、
自分をいくら犠牲にしたっていい。
ギブアンドテイクなんて言葉があるけれど、
一生ギブの人生でも構わない。
だって、
その人のために一生懸命考えて取った行動は、
自分の経験値として貯まっていくんだ。
決して無駄にはならない。
100人にギブして、そのうち1人からテイクがあれば、
こんなに幸せなことはない。
いや、私にとっては、
笑顔が返ってきただけで、
それはもう立派なテイクなんだ。
だから、
「想いよ届け!」は傲慢だ。
幸せのハードルは、低い方が良い。
好きなときに、お散歩ができるのは幸せだ。
好きなときに、麻雀が打てるのは幸せだ。
大切な人に、頼ってもらえるのは何より幸せなんだ。
そんな大切な人を増やすために、
私はこれからも、ギブをし続ける___。
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